詰めフット

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よっしゃー・すっげー・えっっぐを卒業するためのNFL観戦法

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乾坤一擲のcall "Wasp" 成功の裏に隠れた序盤からタネがまかれた印象操作とは?

 

 

 

"Wasp"とは?

大逆転劇

2019 seasonのSuper Bowl。

10点behindで迎えた4Q残り6:57。

自陣35-yardで3rd-&-15になり、stadiumには敗戦ムードが漂い始めていた。

 

勝負の時。

ここでdownを更新できなければ、Chiefsの負けはいよいよ現実味を帯びてくるだろう。

 

 

Mahomesは、望みを繋ぐべく、

Gun Trey Right 3 Jet Chip Wasp Y Funnel

 と乾坤一擲のplay callをteammatesに伝え、これに全てを委ねた。

 

Gun Trey Right...formation。

(Gun=shot gun、Trey=#3がLOSにalign、Right=TEが右にalign)

3 Jet...pass protection。

(3=右方向へ、jet=一種のslide protection)

Chip...Blocking

(TEやRBはblockしたあとrouteに出る)

Wasp Y Funnel...pass route

(wasp=post-cornerの一種、Y=TE、funnel=deep cross)

 

※これはwest coast systemでの命名法である。後日このplay calling systemについて記事にする予定である

 

 

Mahomesが14 yardsも深さをとって投げたballは空中を57.1 yardsも飛び、Hillによってしっかりとcatchされた。

 

perfect time perfect situationで出されたbrilliant callによって勢いづいたChiefsは、

ラスト6分で21 pointsを獲得し、逆転勝利することができた。

 

 

 

 

3x1 formationに対する守り方

Waspがいかに優れたcallであったのかの理解を助けるべく、

まず49ersがどのように工夫して守備をしていたのかを見ていくことにする。

 

cover-6

2019, Week 17, 4:27 remaining in the 4th quarter, 3rd-&-8

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vs LACでの一幕である。

Chiefsは3x1 formationであり、

 

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これに対し、LACはcover-6を敷いている。

 

(cover-6とは、Quarter-Quarter-Half zone defenseと呼ばれるとおり、

片方のcornerとsafetyがdeep 1/4ずつ

逆のsafetyがdeep 1/2

をcoverするものであり、6という数字は、cover-4とcover-2を融合したものであることに由来する)

 

cover-6は、trips sideのdeepを手厚くできるだけでなく、普通手薄になりがちなsingle sideのflat zoneをしっかりと守ることができるため、

3x1 formationに対して相性の良いzone coverageとされている。

 

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いま、3rd-&-8 situationでのChiefsのplay callは、4-Vertである。

Chiefsが3x1 formationを多用し、この隊形からさまざまなexplosiveなplayが繰り出されることは今まで述べてきたとおりであるが、4-Vertもそのうちのひとつである。

(4-Vertとは、4 receiversがverticalに走るconceptである)

 

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cover-6であっても、trips sideのdeepを守るdefenderが2人しかいないため、

4-Vertに対しては、underneathのplayerが1人deepまで下がってcoverする必要がある。

 

いま、#3にはHill()がalignしており、cover-6では彼のverticalにmike linebacker()がついていかないといけないのだが、

軽くて早いHill vs 重くて遅いmikeのone-on-oneは、明らかにmismatchである。

 

実際、

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deepを守る3 defendersはそれぞれのresponsibleがあるreceiversたちによってoccupiedであり、

vs mikeのmismatchを易々とかわしたHillはwide openになった。

 

以上の例から、

3x1と相性の良いcover-6であっても、4-Vertは防ぐのは困難

であることはご理解いただけたであろう。

 

cover-6 Buzz

3x1 4-Vertに対し、cover-6の長所を生かしつつ弱点を克服できるcovergeがある。

それがcover-6 Buzzである。

 

2019, NFCC, 3:08 ramining in the 3rd quarter, 3rd-&-7

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49ersがSuper Bowl直前のNFCCで見せたcoverageである。

 

基本的なconceptは普通のcover-6と同じであるが、決定的な違いはsingle sideのsafety()がunderneathにfly downすることである。

このように守ることで、cover-6で弱点だった#3のverticalを余裕を持ってcoverすることができるのである。

 

3x1 foramotionに対し、3rd down situationで49ersはよくcover-6 Buzzを採用する傾向は、NFCCを見ているだけでわかるが、

それだけでなく、Chiefsが3x1 formationを多用し、よくその#3に俊足のHillをalignさせることを考えると、

49ersがChiefs相手にcover-6 Buzzを敷いてくるであろうことは十分考えられる。

 

4-Vertの印象を49ersに植え付ける

Chiefsが3x1 formationから4-Vertをよくcallすることは先に述べた。

scoutingによって49ersは重々承知ではあると考えられるが、

Chiefsは来たるべき時のためにさらに4-Vertの恐怖を植え付けることにした。

 

2019, Super Bowl, 3:24 remaining in the 1st quarter, 1st-&-10

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1Qの段階でChiefsは3x1のtrips sideを3人ともverticalに走らせた。

このplayはpass incompleteに終わったが、Chiefsは

49ersがcover-6 Buzzに近いcoverageを敷いていることを確認でき、

さらにsafety()に4-Vertの印象を植え付けることに成功した。

 

 

ここぞという時に伏線を回収する

2019, Super Bowl, 6:57 remaining in the 4th quarter, 3rd-&-15

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試合終盤10点behind、3rd down longのsituation。

ここからChiefsの大逆転劇が始まる。

Chiefsはおなじみの3x1 formationである。

 

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これに対し、49ersは上図のようなcover-6ではなく、

 

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cover-6 Buzzを敷いている。

先述したとおり、single sideのsafety()がunderneathにrotate backし、#3のverticalをcoverする。

 

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これにより、cover-6であれば #3 vs mikeのmismatchが起きてしまうところを、

 

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cover-6 Buzzではsafetyが余裕を持って対処することができるのは、先に述べたとおりである。

 

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いま、Chiefsのcallは先に紹介した "Gun Trey Right 3 Jet Chip Wasp Y Funnel" である。

 

 

以降、trips sideの3 receiversの動きと、彼らをreadするdefenderの動きに注目されたい。

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corner(): #1 to #2でread

free safety(): #2をread

strong safety(): #3をread

 

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今のところ3 receiversともverticalを走っているため、

cover-6 Buzzを敷いている49ersは、人数的にも位置関係的にもしっかりと対処できそうである。

 

f:id:manimani_football:20210314000215j:plaincorner()のreadは #1 to #2であり、今までQBに視線を向けながら間接視野で#1と#2の動きを確認していたのだが、

ここで、#2のHill()が内側に入っていくのを見ると、自分の担当がdeepの外側1/4であることより、

 

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cornerはHillから目を切って#1()に視線を移し、#1のDig routeについていくことにした。

1Qで4-Vertの脅威を植え付けられていたfree safety()は、Hillのverticalについていくため、体の向きをも変えている。

 

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しかし、Hillのrouteは、verticalではなく、Wasp(一種のpost-corner)である。

そのため、Hillの担当はsafety()ではなくcorner()であることになり、

cornerは#1よりも#2のHillを優先的に守らなければいけなかったのである。

 

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cornerは#1のDig routeに釘付けになり、safetyは完全に腰を返してしまっている。

 

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そのため、Hillはwide openになり、空中を57.1 yardsも飛んだpassは成功した。

 

Chiefsの3x1 formationに対して、cover-6 Buzzという一般的に最適なcoverageを敷いたにもかかわらず、

Chiefsによる前々からの刷り込みによって、49ersはその裏をかかれてしまった。

 

おまけ

Wasp信仰

そんなこんなで、Chiefs fanの間では、Waspというplayが信仰されることとなった。

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Madden 21にも

おめでたいことに、Madden 21にもこのplayが収録された。

 

 

 

Waspがcallされることになった経緯

鳥肌をもう一度体験できる

www.youtube.com

 

↓Super Bowlの感動をもう一度

youtu.be

 

↓参照

youtu.be