肉を切らせて骨を断つ
2022-2023 season, Divisional Round。
49ersのMLB- Fred Warnerの超人的なcoverが話題になったplayがある。
LOS上からスタートして、Cowboysの俊足WR- CeeDee Lambのverticalを防いだシーンだ。
インターネット上では、Warnerのathleticismに陶酔する者もいれば、QB- Dak Prescottのquarterbackingを誹る者もいた。
しかし、このワンシーンにおいて、真に注目すべきは、49ers defenseとCowboys offenseの両coordinatorsによる、深謀遠慮な知略の応酬である。
そして、一枚うわてだったのは、思い切りのいいcallを選択した49ers defenseであった。
要約
・3rd-&-5 situation
・49ersは2-Rollでunderneathを固める代わりにMOFは激弱なcoverage
・そのウラをかいてCowboysは4-Vertでdeepを猛攻
・しかし、49ersによる瞬殺のblitzの前に斃れた
まさに『肉を切らせて骨を断つ』守り方
長い考察であるが、小説のような読み応えにきっとご満足いただけるため、ぜひ最後まで読まれたい。
まずは動画からご覧に入れる。
— まにまに (@dal_kc_manimani) 2023年1月29日
pre-snap
2022, Divisional Round, San Francisco vs Dallas, 6:16 remaining in the 3rd quarter, 3rd-&-5
3rd-&-5 situation。
Cowboysは、empty formationを敷いており、ace receiverのCeeDee Lamb(No.88)を#3 にsetさせている。
※emptyとは...
0 RBで、5人のeligible receiversがperimetersに並んだpass-heavyなformation。
ここでCowboysはLambにpeel motionさせる。
これに対し、FSのGipson(No.31)がついてきたため、49ersはman coverageを敷いていると考えられる。
single-high lookであることを踏まえると、現時点では上図のようなCover-1も考えられる。
front defenderが何人か上図のvacant spaceにdropする可能性は大いにあるが、
motionに対するadjustを見る感じ、man-basedなcoverageであることは間違いないであろう。
そして、LambをFS-Gipsonがman-to-manする。
49ers defenseのcoverage
2-Roll coverage
実際は、49ers defenseは上図のような2-Roll coveageを敷いていた。
single-high lookから、2-high shellにdisguiseしている。
flat zoneに強い
予想されたman coverageではなく、zoneで守っている。
そのため、3rd-&-5というsituationにおいて十分想定されるshort-pick(rub)やquick outなどに対してかなり効果的であると言える。
※short-pick(rub) routeとは...
近目にsetさせたreceivers同士を交差させるrouteを走らせるなどして、彼らをman-to-manするdefenders同士をぶつからせる、または片方のreceiverで妨害することで、片方のreceiverをopenにさせるconcept。
また、2-high shellであることより、single-high zoneのdefenseで弱点となるflat zoneが、両sideともcoverされることとなる。(上図のオレンジ)
Buzz
さらに、このcoverageにおいて特筆すべきことは、boundary side(狭side)のdeep 1/2をsafetyではなく、CBがcoverすることである。
このようなcoverageは稀であるため、post-snapでCBが大きくdeepにdropしている動きは、QBにとってはCover-3のようなsingle-high zoneであるように見えてしまう。
しかし、実際はflat zoneにLBがbuzzするため、flat routeをtrapすることができるというわけだ。
弱点
しかし、このconceptにおいて弱点となるのは、上図のseamである。
もともと、2-high shell zoneのcoverageにおいてMOF(Middle-Of-the-Field)は弱く、
さらに2-RollではCBがdeep 1/2をcoverするため、余計にMOFが大きく空くだろう。
3RH
そこで、49ersは、上図のようにM- Warnerに3RHをplayさせることによって、Lambのseam(vertical)をcoverしようとする。
MLBに俊足のLambのverticalをcoverさせるのはあまりにも酷だが、3rd-&-5というsituation的に思い切ったcallが出されたのであろう。
※3RHとは...
match-coverageの用語。
・#3 eligible Receiverがvertical → #3をman-to-man
・#3がその他 → Hook zoneをcover
Cowboys offenseのplay concept
今まで、長々と49ers defenseが2-Rollをcallしたその心について解説してきたわけであるが、
Cowboysのcallは、49ersの予想に反して4-Vert conceptであった。
underneath、特にflat zoneに人手を割いた49ersの思惑に反し、Cowboysは4人のreceiversをdeepに走らせた。
そして、先述した弱点のMOFに2人も入っていく。
2-Rollは大外れである。
49ers defenseのblitz design
QBに投げられる前に仕留める
Cowboysの4-Vert conceptにおいて、QBのread progressionは上図のとおりである。
以降、QB- Prescottの目線に注目されたい。
snap直後、1st readのWR- Gallup(No.13)を見ている。
その後、2nd readであるLambに視線を移す。
LambはWarnerにうまく被られており、あまりtargetとしては相応しくないように見える。
しかし、すでにGipsonのblitzが差し迫っており、3rd readを確認する余裕がない。
そのため、Prescottは一か八かでLambに投げたが、Warnerの好coverによってdownの更新を阻まれてしまった。
3rd targetはガラ空きだった
先述したとおり、49ersの2-Rollでは、WR-Tolbert(No.18)のseam(vertical)をcoverすることはできず、ドフリーになっている。
あとコンマ数秒の猶予があれば、Prescottは確実にTolbertに投げることができたであろうし、もしそうなっていたら一発touchdownに繋がっていただろう。
QBに時間を与えない美しいblitz design
では、どのようにして、49ers defenseは、こんなにも早くblitzerをPrescottに到達させることができたのだろうか。
pre-snap。
49ersは上図のとおり、5-men frontである。
これにより、Cowboysはpass protection ruleをBOB(Big-On-Big)にせざるを得ない。
これに対し、49ersのblitzは上図のようなdesignである。
4人しかrushに入れないようだ。
Georgia大のplaybookにある、"FALCONS"というblitz designによく似ている。
以降、このdesignについてbox内を左右に分けて、詳しく見ていく。
defensive-right-side
defensive-right-sideは、C, LG, LTとWarner, Ebukam, BosaがそれぞれBOBである。
しかし、WarnerとEbukamがzone-offし、rushをかけるのはBosaのみである。
snap後、Warnerは3RHをplayするため勢いよくdropした。
Ebukamは、CとLGを引き付けるため、一歩rushするふりをしてからzone-offした。
これにより、上図のとおり、defensive-right-sideは、たったの1人しかrushしていないのに、OLは3人も引きつけることに成功しており、CとLGの2人をprotectionに関して無力化させることに成功している。
この後、C- Biadaszはdefensive-left-sideからやってきたcrossface-A-gap stunt(後述する)のhelpをしたが、
LG- McGovernは本当に何もすることができていない。
QB- Prescottには、blitzerの魔の手がすでに迫っているというのに。
defensive-left-side
defensive-right-sideのprotectionは、RG, RTとArmstead, OmenihuがそれぞれBOBであった。
一方、49ersのblitz designは上図のようである。
OmenihuがCOP(COntain-Pressure)し、Armsteadがcrossface-A-gap stuntでRGを引きつけつつ、Cを巻き込む。
大きく空いたB-gapにGipsonがblitzに入る。
snap後。
2vs2のBOBである。
ArmsteadはRGに一歩向かってからstuntをすることで、RGの注意を引き、B-gap blitzの存在に気づかせないよう工夫している。
RGとRTの2人は、目の前のDLに夢中になるあまり、B-gapを大きく空けてしまい、Gipsonは難なくPrescottに到達することができた。
最後に、
たったの4人しかrushしていないのに
・LGはprotectionに関して無力化されている
・GipsonはB-gapを素通り
できていることを再度確認されたい。
さいごに
Lambのpeel motionに対してGipsonがついてきたことより、
上図のようなman-coverageであるとPrescottが判断したことは先述した。
ここからGipsonをblitzに入れるわけであり、snap後のPrescottは
Lambをman-to-manしているdefenderがblitzに入った
→Lambがopenになりやすい
と考えてしまったに違いない。
↓の記事でも解説したが、Prescottの視界の外からace receiverであるLambをman-to-manするcoverage designは、Prescottに対して非常に有効であったと言えそうだ。
まぁ、LOSからのスタートで、位置関係的にもスピード的にもmismatchなLambに対してこのcoverができる超人的なMLBがいなければ、49ers defenseは
肉だけでなく骨も切られていた
であろう。
manimani-football.hatenablog.com
↓参考
例⑥
— まにまに (@dal_kc_manimani) 2023年1月25日
6:14 remaining in the 3rd quarter, 3rd-&-5 pic.twitter.com/2pGyvKO4Vg