詰めフット

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よっしゃー・すっげー・えっっぐを卒業するためのNFL観戦法

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QBの目線がSafetyをcontrolする!?

今回は、QBが目線を使ってSafetyをcontrolし、わずかなタイミングを稼いでいることの例を、新旧スーパーQB Tom BradyとPatrick Mahomesの例をとり、考察していく。

なお、No Look Passを取り扱うわけではないことに留意されたい。

 

 特にBradyのはすごいから、ぜひ見てみてくださいね

 

Patrick Mahomesの例① (Sを動かさない)

↓このconceptのprimary routeは、右のHillのdouble move からのverticalである。

以降、画面中央のsingle-high safety #31の動きと、Mahomesの視線に注目されたい。

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snapを受けてからこの段階まで、Mahomesはずっと左に視線をやっている。

 

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passを投げる体勢になって初めてMahomesは右のHillに目をやり、1on1で抜きにかかっているのを確認すると、すぐに投げた。

Mahomesの視線によって、SafetyはHillのresponsibleがあるCB#24 Davis IIIの補助に回るのが遅れ、75 yardsのTDが決まった。

目線でcontrolする、という余裕もさることながら、右に目をやり0.4秒で判断をし、65 yards近く投げてしまう判断力と肩の強さはただただ恐ろしい。

あと、10 yards離れたCover-3のCBを普通に打ち抜くHillもやばいよね。

 

Mahomesの例② (Sを動かさない)

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画面奥のdeep zoneには2人のSafetyがおり、CBがreceiverたちにtightにsetしている。また、CBの目線がMahomesではなく、それぞれのresponsible receiverを向いている。

そのため、pre-snapの時点で、MahomesはCover-2 man(deepを2人で、underneathはman-to-manで守る)であると判断したに違いない。

 

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snapを受けて、一歩drop backするわずかな間に、画面右のsafetyがunderneathにinvertしてきたのを確認。(このsafetyはRBをman coverしている。)

 

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次の瞬間にはMahomesの目は左を向いているため、今までの一瞬でsingle-highのpress man coverageであると判断したことになる。

 

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視線を左に向け、safetyをcontrolしている。

 

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間接視野でHillのcrossing routeが空いているのを知っていたMahomesは、視線を右に移すやいなや、すぐに投げた。

Mahomesの視線操作によって、safetyはHillのcoverのhelpが遅れ、44 yardsのTDに繋がった。

 

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以上二つのplayは、以下の動画(↓)中で見れます。

youtu.be

 

single-highに対して、Hillのcrossing routeがchiiefsのexplosive conceptであることは、以前の記事(↓)を参照されたい。

manimani-football.hatenablog.com

 

 

Bradyの例 (Sを逆に動かす)

Mahomesの例では、左をずっと見ていて、投げる直前に右を向いていた。

これによって、safetyが右に寄るのが遅れたわけである。

一方、Bradyの視線操作はもっと高度で、safetyを投げたい側と逆向きに動かすことができている。

以下に紹介する。

 

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Rions(灰)は、single-highのCover-3 carry(verticalに対してはcover-3、underneathに対してはman-to-man)を敷いている。

一方、Buccaneers(白)はempty formation(=0RB)である。

Buccaneersのconceptは、#81 Antonio Brown(AB)と#13 Mike Evansが両sideからverticalを走り、cover-3をbeatすることである。

safetyの両脇には広いseamがある。

ここにABとEvansが走りこみ、両方からsafetyを挟み込むことで、できるだけsafetyから距離を取ろう、というわけである。

 

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snapを受けた時点で、Bradyの視線はすでに左側に向けられている。

 

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この段階までBradyは左を見続けているが、single-highのsafetyの位置は全く動いていないことがお分かりいただけるだろう。

なぜなら、先ほどのMahomesの例のように、NFLクラスのQBであれば目線操作はよくするものである、と優秀なsafetyは知っているからである。

 

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今、Bradyは右を見た。

 

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画面奥のsafetyが、右側に向けて動き出している様子が見受けられる。

 

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Bradyは再び視線を左に戻し、

 

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ABに投げた。

 

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右(長く)→左(一瞬)と見るのではなく、左(長く)→右(一瞬)→左と見ることで、

わずか一瞬右をチラ見しただけなのに、safetyが4~5 yardsも右に動かされ、ABのためのわずかなspaceが生み出されている。

 

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↑ABがcatchした時点。

もし、このsafetyが元いた場所で守っておればこのpassが通っていないことは容易に想像がつくであろう。